1.目的
 Y-デルタ結線においては、1次と2次とで位相差30°があることは知られている。
 デルタ-デルタ結線において、内接デルタ及び辺延びデルタ結線時の位相差(θ)を確認する。

          内接デルタ結線                 辺延びデルタ結線
        

2.計算結果
 1次電圧を100Vとして2次電圧を振った時の位相差(θ)を示す。計算式の導き方は4項を参照。
 なお、内接デルタでは電圧を半分以下にすることはできないため、50Vまでのデータとなっている。

内接デルタ 辺延びデルタ
計算式 電圧比 =  \displaystyle \frac{1}{2\cdot\sin(150-\theta)} 計算式 電圧比 =  \displaystyle \frac{1}{2\cdot\sin(30-\theta)}
電圧[V]位相差[°] 電圧[V]位相差[°]
1000 1000
903.7 1103.0
808.7 1205.4
7015.6 1307.4
6026.4 1409.1
5060.0 15010.5
16011.8
17012.9
18013.9
19014.7
20015.5

3.結論
 内接デルタの位相差は、辺延びデルタより大きく、最大で60°となる。
 一般的な電圧タップ(±20%)での位相差は、10°以下であり、Y-デルタ結線の位相差より小さい。
 辺延びデルタの最大位相差は計算式上30°となることがわかった。
 参考までに、内接デルタ及び辺延びデルタの巻数比計算方法を導き、その検証を行った。
 この内容については5項に示す。

4.位相差計算式
(1)内接デルタ結線
  元のデルタ結線(黒△)と内接デルタ結線(赤△)との位相差θを求める。
  元のデルタ結線の電圧を1として、内接デルタ結線の電圧をχとする。
  三角形ABO(青△)を見た時、(Oは正三角形の重心)
   AO= \displaystyle   \frac{1}{\sqrt{3}} , BO= \displaystyle   \frac{x}{\sqrt{3}} , ∠ABO = 180 – 30 -θ = 150-θ となる。
  ここで、正弦定理  \displaystyle \frac{a}{\sin(A)} = \frac{b}{\sin(B)}から
    \displaystyle \frac{\frac{x}{\sqrt{3}}}{\sin(30)} = \frac{\frac{1}{\sqrt{3}}}{\sin(150-\theta)}
  これを解いて
    \displaystyle x=\frac{1}{2\cdot\sin(150-\theta)}
  この式から逆算で位相差θを算出する。

(2)辺延びデルタ結線
  元のデルタ結線(黒△)と辺延びデルタ結線(赤△)との位相差θを求める。
  元のデルタ結線の電圧を1として、辺延びデルタ結線の電圧をχとする。
  三角形ABO(青△)を見た時、(Oは正三角形の重心)
   AO= \displaystyle   \frac{1}{\sqrt{3}} , BO= \displaystyle   \frac{x}{\sqrt{3}} , ∠ABO = 180-150-θ = 30-θ となる。
  ここで、正弦定理  \displaystyle \frac{a}{\sin(A)} = \frac{b}{\sin(B)}から
    \displaystyle \frac{\frac{x}{\sqrt{3}}}{\sin(150)} = \frac{\frac{1}{\sqrt{3}}}{\sin(30-\theta)}
  これを解いて
    \displaystyle x=\frac{1}{2\cdot\sin(30-\theta)}
  この式から逆算で位相差θを算出する。

5.巻数計算式と、その検証
(1)内接デルタ結線
  元となる巻線数を1とした時、タップ電圧比がνとなる巻数χを求める。
  余弦定理  \displaystyle c^{2} = a^{2} + b^{2} - 2ab\cdot\cos(\theta) より
  三角形ABC(青△)を見た時、
    \displaystyle v^{2} = (1-x)^{2} + x^{2} - 2(1-x)x\cdot\cos(60)  \displaystyle = 3x^{2} - 3x + 1
  これを解いて、
    \displaystyle x = \frac{1}{2} + \frac{1}{6}\sqrt{12v^{2} - 3}

  例)タップ電圧を0.8とする場合の巻数の比は上式より0.86となる。
  検証結果:シミュレーションの結果、100Vに対して約80Vが得られた。

 <シミュレーション回路>
 
 <シミュレーション結果>
 

(2)辺延びデルタ結線
  元となる巻線数を1とした時、タップ電圧比がνとなる巻数χを求める。
  余弦定理  \displaystyle c^{2} = a^{2} + b^{2} - 2ab\cdot\cos(\theta) より
  三角形ABC(青△)を見た時、
    \displaystyle v^{2} = (1+x)^{2} + x^{2} - 2(1+x)x\cdot\cos(120)  \displaystyle = 3x^{2} + 3x + 1
  これを解いて、
    \displaystyle x = -\frac{1}{2} + \frac{1}{6}\sqrt{12v^{2} - 3}

  例)タップ電圧を1.2とする場合の追加巻数の比は上式より0.13となる。
  検証結果:シミュレーションの結果、100Vに対して約120Vが得られた。

 <シミュレーション回路>
 
 <シミュレーション結果>