1.概要
 お客様からの下記要求に対して、対応した事例を紹介します。
 1)三相最大容量20kVA、入出力電圧は共に400Vとする。
 2)1次電圧に対し2次電圧の位相をタップ切替でなく30度まで連続可変とする。
 3)設備の単発品なので、電圧調整は自動化の必要なく手動でもよい。
 4)全体を覆う筐体は不要、装置全体は安価優先とする。

2.位相可変の原理(発想の着眼点)と設計指針
 1)三相変圧器で、入出力の電圧変換を行う内接Δ結線変圧器は当社で多数設計製造しており、
  これと各相3つの電圧調整器を組合わせれば、内接する三角形の角度を自由に変化できる。
  (【図1.位相変圧器の原理図】参照)
 2)入力電圧から出力位相が離れると三角形は小さくなり、要求項目の入出力電圧を同じにするという仕様を
  満足できないため、後段にも変圧器と各相3つの電圧調整器を組合わせ、昇降圧可能とする。
 3)Δ結線の変圧器に接続される電圧調整器は手動で各相の連携なく自由に調整可能とする。
 4)一般的にΔ結線の変圧器は中性点が無く、三相の平衡度がわからないため、
  電圧バランスのモニタが出来るようΔ結線に「仮想中性点」を設ける。
 5)各変圧器はオートトランスとし小型化する。(安価対応)
 6)電圧調整器は標準品の200Vとする。(特別仕様なしで安価対応)

  
                           【図1.位相変圧器の原理図】

3.製作製品の製品仕様

仕 様 内  容
製 品 名 位相電源装置: 位相制御部+電圧昇降圧部の構成(ケース無し)
図  番 PS‐HB0105
相数・周波数 三相 50/60Hz
容  量 20kVA
入力電圧 400V
位相調整範囲 0~30°(最大60°理論値)
出力電圧・電流 400V 最大30A
入出力400V時は電流30Aですが、位相角度に応じ低減します。30°の時は約20Aです。
安全機能 1)入力電圧及び各相のバランス監視
 ①アナログメータで相毎にモニタ可能
 ②Δ結線には仮想中性点(N1)端子があり、相毎のバランスをモニタ可能
2)出力電圧の各相にデジタルメータリレー付き
 ①過電圧防止機能:警報が出せるようコンパレータ付き
 ②警報の種類(光、音等)や回路は、お客様で取付け可能
3)出力電流の各相バランスはアナログメータでモニタ可能

4.回路図
  

5.外観及び試験中の様子
  

6.試験結果
  位相30度時の波形例を示します。
  入出力の波高値は等しく、角度も30度が得られています。